日本でも昨年から司法取引の制度が導入されました。 司法取引というと、「自分の罪を認めて刑を軽くしてもらう」というイメージがありますが、日本で導入された制度は違います。 日本版司法取引の制度は、「他人の犯罪を立証する情報を提供することによって、自分の訴追を免れたり、刑を軽くしてもらう」という制度です。 「他人」には共犯者も含まれますので、典型的な例としては、違法薬物の売買や振り込め詐欺などの組織犯罪で威力を発揮することが期待されています。 つまり、末端の実行犯が司法取引によって検察官に背後関係の情報を提供することで、自分の刑を軽くしてもらう一方、その情報に基づいて背後の黒幕を処罰することが可能になったわけです。 この制度は、反社会的組織や犯罪集団だけに適用されるわけではありません。 脱税や贈賄などの企業犯罪も適用の対象になっています。 実際、カルロス・ゴーン会長が逮捕されたことで注目を集めた日産の金商法違反事件では、司法取引が用いられたと報道されています。 それでは、今後、企業犯罪について司法取引が利用されるケースとしては、どんなものが考えられるでしょうか。 従業員の立場からは、例えば、海外に事業展開するために、現地の公務員に対して賄賂を渡せと上司から業務命令された社員が、検察官と司法取引することで、自分は訴追を免れ、上司や会社が処罰されるようなケースが考えられます。 逆に、会社側としても、旧経営陣の犯罪行為を告発する際など、司法取引をうまく利用することによって、会社自身の処罰を免れるとともに、会社の評判や名誉を維持することも可能になります。 「司法取引」というと遠い世界のことのようですが、会社の従業員や経営者にとっても、案外身近な問題にもなり得ます。頭の片隅に入れておくと、いざというとき役に立つかもしれません。 (弁護士 翠川洋)
No | タイトル |
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2 | 「キャンペーン価格」と不当表示 |
3 | 内容証明郵便の使い所 |
4 | 民法改正の一番の注意点は? |
5 | 契約書の重要性 |
6 | 同族会社の注意点 |
7 | 競業避止義務の重要性~営業秘密の流出を防止するために~ |
8 | 労働審判手続 |
9 | 企業犯罪と司法取引 |
10 | 「定型約款」について |
11 | この会話、録音してもいいですか? |
12 | 同一労働同一賃金の最高裁判決について(12/3セミナーのフォローコラム) |
13 | 2019年会社法改正のポイント |
14 | 共有地の処分に反対の共有者がいる場合の解決策は? |
15 | 期限がきたら必ず土地を返してもらえる土地の貸し方は? |
16 | 支払督促って何? |
17 | 新型コロナワクチン接種・企業対応のポイント |
18 | 風評被害について |
19 | 電子契約・電子署名について |