最近は,民法改正をはじめ,重要な法律の改正が相次いでいますが, 「民事執行法」という法律も,令和元年5月10日に改正法が成立し, 令和2年4月1日に施行される予定となっています。 「民事執行法」は,勝訴判決など,権利の存在を公的に証明する文書(債務名義)を取得した債権者が,強制的に権利の実現をはかるための要件や手続などを定めた法律です。 今回の改正では,大きく, 1.債務者の財産の発見を容易にする改正, 2.反社会的勢力を競売手続から排除するための改正, 3.子どもの引き渡しの強制執行の要件や手続きなどを整備するための改正, などが目玉となっています。 今回は,この中で,債権回収実務に大きな影響を与えうる1について説明します。 勝訴判決を得たにもかかわらず,債務者が債務の履行をしない場合, 債権者は,債務者の財産を差し押さえるなどして, 強制執行により債権の実現をはかる必要がありますが, 強制執行を行うためには,債権者の側で強制執行の対象となる債務者の財産を見つけ,特定して申し立てる必要があります。 ところが,債務者がどこに,どのような財産を持っているか分からず強制執行ができない, ということも少なくありません。 このような場合に,債務者の財産を見つけるための制度として, 現行法では,「財産開示手続」というものがあります。 この制度は,債務者に裁判所に出頭してもらい, 自己の財産について陳述してもらう,というものですが, 実効性が低く,利用も極めて低調となっております。 また,弁護士を依頼した場合に限定される手法となりますが, 弁護士が,弁護士会を通して銀行等に照会をかけ, 財産の有無等を調査する方法もあります(いわゆる「23条照会」)。 しかし,時折,回答を拒否してくる回答先がある等の難点があります。 このような現行制度の問題を踏まえ,改正法では,新たに, 1.金融機関から,債務者の預貯金や上場株式,国債等に関する情報を取得できる制度, 2.法務局から,債務者の土地・建物に関する情報を取得できる制度, 3.市町村や日本年金機構等から,債務者の勤務先等に関する情報を取得できる制度, がそれぞれ新設されました (ただし,3は,養育費等の権利者や,生命身体の侵害による損害賠償請求権の権利者のみ利用可能です)。 また,現行法でも存在している4.財産開示手続の実効性をより高めるための改正も行われました。 これらの制度を上手に利用して,債務者の財産(預貯金や株式,不動産,給料等)を発見することにより,強制執行を行うことがこれまでよりも容易になることが期待されます。 どのような場合にこれらの制度が利用できるかどうかや, 利用にあたっての手続等,制度の詳細については, 弁護士にお気軽にご相談いただければ幸いです。 (弁護士 小向俊和)
※この記事は2020年2月に当事務所メールマガジンにて配信した記事と同一です。