債権回収の実務
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官澤綜合法律事務所
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債権回収の実務
1 債権回収の基本
債権者 → 債務者
債権…特定の人(債務者)に対し特定の行為を要求できる権利
例 貸金、売買代金、引渡し、働け、損害賠償しろ…
特色 相対性…債務者に対してのみ主張可
債権は債務者以外には請求できない!
A 債権(貸金、売掛金等)を強制的に回収するためには…
→債務者(含む保証人)の財産を差押するしかない
B 財産がなければ差押もできない
債務者を増やし差押できる財産の所有者を増やす →連帯保証人
事前に財産を確保する →担保物権の設定
事後に財産が喪失するのを防ぐ →仮差押
C 差押するためには債務名義又は担保が必要
債務名義を取得する →訴訟(裁判)による判決の取得
→公正証書の作成
訴訟等の手間を省く →担保物権の設定
D 差押え・破産等による配当は債権者平等が原則
優先的に配当を受けたい →担保物権の設定
2 債権回収のための具体的対策
A 事前の対策 …取引先との力関係で困難な場合もある
ア 担保物権の設定(根抵当権等)
利点 第三者に売られても差押できる
債務名義なしで差押できる
他の債権者より優先的に配当を受けられる
イ 保証金の徴収
相殺により優先的に債権回収できる
相殺は、相手方の承諾無しで通知のみで可能
売掛金
甲社 ⇄ 乙社
保証金
ウ 連帯保証人
債務者が増える・差押できる財産が増える
(注意点)
1.書面で契約しないと無効(民§446②)
必ず保証人本人に自署させること!
2.根保証(継続的保証)…一定の範囲に属する不特定の債務を保証
信用保証…継続的な売買取引・銀行取引等の保証
期間・限度額の定めの無いものは保証人に解約権有り
身元保証…被用者の損害賠償債務を保証
身元保証法で期間等の制限
貸金等根保証契約(民§465-2~5)
…保証する範囲に貸金又は手形割引が含まれる根保証(法人は除く)
極度額を定めなければ無効
5年以内の確定期日を定めなければ3年で確定
主債務者・保証人の破産・死亡により確定
B 事後の対策(担保物権が不十分な場合)
ア 債務者・連帯保証人の財産調査
不動産・動産
債権…預貯金、給料、売掛金、工事代金等
イ 仮差押
差押前の債務者の財産処分を防止
担保(保証金)の必要…債権額の20~10%
ウ 担保物権・連帯保証人の追加
通常はなかなか困難
→仮差押等で圧力をかける
→取引継続、分割支払等の交換条件とする
→別紙「支払いについてのお願い(保証書)」の利用
エ 債務名義の取得
訴訟(裁判)→判決
公正証書の作成 →別紙「公正証書作成委任状」の利用
#実印で押印・印鑑証明書添付
オ 差押 ←担保物権の実行・債務名義による強制執行
☆ 支払条件緩和や取引継続をお願いされた際、その交換条件として連帯保証人追加や公正証書作成を提案・実現できると、その後の債権回収を有利に行うことが可能となる!
C 債権譲渡による債権回収
債務者が有している債権(売掛金、工事代金等)を譲渡してもらう
→直接取立て債権に充当できることとなる
#債務者(譲渡人)の名前で債務者が有している債権の債務者(第三債務者)に対して内容証明郵便で債権譲渡通知書を送付する必要!
別紙「債権譲渡通知書」を参照
[説例] Xは、Yに対し金100万円の売掛金債権を有していたが、Yは、他にも多額の債務を負っており、手形不渡りを出してしまった。そこで、Yの財産を調査したところ、Yは、Zに対し金100万円の請負工事代金債権を有していることが判明した。
Q1 YZがXに非協力的な場合、Xは、どのようにして自己の債権回収を行ったらよいか?
X―――→Y
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↓
Z
Q2 YがXに協力的な場合、Xは、どのようにして自己の債権回収を行ったらよいか?
X―――→Y
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↓
Z
Q3 YはXに非協力的だがZがXに協力的な場合、Xは、どのようにして自己の債権回収を行ったらよいか?
X―――→Y
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↓
Z
☆ 金銭債権の譲渡は原則として自由であることを活用すると、迅速かつ効率的な債権回収が可能となる場合がある!
※ 債権譲渡の難点は、対抗要件である第三債務者Zへの通知により、Yの経営悪化を第三者に知らしめてしまい、Yを破綻させる恐れがあること。
↓
動産債権譲渡特例法により債権譲渡の対抗要件を第三債務者への通知ではなく、東京法務局への登記により備えられるようにした。
しかも、将来の集合債権の譲渡を受けられるのようになった。
↓
債務者の将来の多数の売掛先への債権の譲渡を受け担保に取る!
X―――→Y
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A B C D E
D 消滅時効(民§167)…時の経過により権利が消滅
弁済者の免責の確保(支払の証拠が出せず二重払いさせられるのを防ぐ)が本来の目的。
時効期間
10年←民法上の債権の原則期間(民§167①)、判決(民§174-2)
5年←商行為による債権の原則期間(商§522)…一方が商人で適用
3年←工事代金等(民§170)
2年←売買代金、学費等(民§173)、給料(労基§115)
1年←運送賃、宿泊料、飲食料等(民§174)
時効の中断(民§147)
a 請求
裁判上の請求が原則
催告では6ケ月以内に裁判上の請求をする必要(民§153)
b 差押、仮差押又は仮処分
c 承認
例 残高確認書、一部弁済、支払猶予のお願い…
別紙「支払いについてのお願い(債務確認)」の利用
3 債権回収の手続の流れ
A 担保権の有る場合
延滞
↓
請求 ※内容証明郵便を利用することも有り
a債権者が差出人 →回収
b弁護士が差出人 →回収
↓
担保権実行(競売等) →回収
↓
配当
↓
回収
B 担保権の無い場合(担保不足の場合を含む)
延滞
↓
(仮差押) →回収
↓
請求 ※内容証明郵便を利用することも有り
a債権者が差出人 →回収
b弁護士が差出人 →回収
↓
訴訟(裁判) →回収
↓
強制執行(競売等) →回収
↓
配当
↓
回収
☆ 不良債権を発生させないためには、まめな催促や取引先訪問による相手方の経済状態のチェックが効果的!
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