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官澤綜合法律事務所

弁護士 官 澤 里 美

電話 022-214-2424
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201606不動産の売買と賃貸借の注意点 セミナーレジュメ 官澤綜合法律事務所.jpg


 

Ⅰ 不動産売買の注意点①…登記の重要性

[事例1]
Xは、退職金が出たので、甲土地を所有者Yから1000万円で購入し、代金はすべて支払ったが所有権移転登記を行わないまま、甲土地上に1000万円で自宅乙建物を建てて家族と入居した。ところが、Xが乙建物に入居後、金に困っていたYは、甲土地をZにも売却して代金を受領し、同土地の所有権移転登記をZに対して行ってしまった。

 
Q1:甲土地の所有権は、 契約 → 代金完済 → 登記 のどの時点で売主から買主に移転するか?契約の際の特約の有無により違いはあるか?

   ⇒民§176

Q2:Xは、Zから乙建物を取り壊して甲土地を明渡すように請求を受けた場合、それに応じざるを得ないか?ZがYから甲土地を購入する際に同土地をXが購入していることを知らなかった場合と知っていた場合で結論は異なるか?
   
   ⇒民§177
 
   Y →①売買→ X     Z:善意⇒?
   ↓
   ②売買              悪意⇒?
   ③登記
   ↓
   Z
 
 
Q3:XやZが損害を受けた場合、その損害の賠償を請求する裁判をYに提起して勝てるか?また、Yから実際に賠償金を取れるか?
 
 

〔物権変動の意思主義〕 

第百七十六条 物権ノ設定及ヒ移転ハ当事者ノ意思表示ノミニ因リテ其効力ヲ生ス 
 

〔不動産に関する物権変動の対抗要件―登記〕 

第百七十七条 不動産ニ関スル物権ノ得喪及ヒ変更ハ登記法ノ定ムル所ニ従ヒ其登記ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス

☆対抗要件
物権の変動は、当事者間では意思表示(契約)のみで発生するのが原則だが (民§176)、第三者に対しては取引の安全の保護のため対抗要件を備えぬ限り主張できない。


誰が物権を持っているのか他の人に分かりやすくするために対抗要件を設けた。それを守らせるために、怠った場合に第三者に対抗できないというペナルティーを設けた。このペナルティーは厳しく、第三者の善悪を問わない。但し、背信的悪意者(悪質な悪意者)は除く。*不動産の対抗要件…登記 (民§177)
 
◎不動産取引は、金員と登記必要書類(所有権移転登記・抵当権抹消登記)との引換が鉄則!
 

不動産取引の例…通常の売買
            抵当権の設定・抹消
 
登記必要書類
・権利証(但し、平成17年3月以降は発行されず)又は登記識別情報(12桁の英数字の組合せ)
 紛失した場合→事前通知制度 又は 司法書士・弁護士による本人確認
・実印を押した登記委任状
・印鑑証明書(3ヶ月以内)


※抵当権
抵当権者は、債務者が債務の弁済を怠った場合、抵当権を設定した不動産について、競売を申立して優先的に自己の債権の弁済を受けられる。

(その利点)
債権者
a債務名義(判決等)なしで競売
 裁判の時間と費用を節約できる
b優先弁済権
 ⇔抵当権が無ければ債権者平等
c絶対性(第三者への追及力) 但、対抗要件が必要!
  第三者に売られても競売申立できる
債務者
占有移転無し→目的物を使用占有できる!
          賃貸、売却等の処分も自由!

Ⅱ 不動産売買の注意点②…所有者確認の重要性

[事例2]
Xは、甲土地を登記簿上の所有権名義人Yから買い受け、その所有権移転登記を受けた。ところが、甲土地は、本来Zが所有権者だったのであるが、YがZ宅から権利証、実印等を盗んでY名義に売買を原因とする所有権移転登記をしたものであった。Zが同登記に気付いて「所有権は自分にあるので、登記を戻せ。」とXに請求した場合、Xは同請求に応じなければならないか?

甲土地 
(登記)
Z=①所有権移転登記(売買)⇒Y=②所有権移転登記(売買)⇒X
    但し、権利証等を盗んで勝手に行なわれたもの。
 
☆承継取得
所有権者から所有権を譲渡、相続等により承継することにより所有権を取得する

 
◎売主が所有権を有していなければ、買主はいくら代金を支払ったといっても所有権を取得できない!
 →不動産の売買の場合は、売主が所有権を有しているかどうかしっかり確認すること!
 
☆不動産の所有者の確認方法

① 不動産登記簿の確認
   but 場所を誤解し、別の不動産の登記簿を見ている場合もある。
   登記簿上の所有者が真実の所有者とは限らない。


② 14条地図、公図による不動産の位置・地番の確認
   14条地図…正確  ←国土調査等の正確な測量
   公図  …不正確 ←明治時代に地租徴収のため作成
 
③ 現在の占有者の確認
 
④ 過去20年間の権利移転・占有者の確認→取得時効 (民§162)

〔所有権の取得時効〕 
第百六十二条  
  二十年間所有ノ意思ヲ以テ平穏且公然ニ他人ノ物ヲ占有シタル者ハ其所有権ヲ取得ス 
  2 十年間所有ノ意思ヲ以テ平穏且公然ニ他人ノ不動産ヲ占有シタル者カ其占有ノ始善意ニシテ且過失ナカリシトキハ其不動産ノ所有権ヲ取得ス
 

Ⅲ 不動産賃貸借の注意点

借地借家法、農地法等により賃借人保護がはかられている。
 
[事例3]
Xは、YからY所有の甲土地を賃貸借期間10年の約束で賃借し、乙建物を建てて家族と入居し鮨屋を営んでいた。Xは、乙建物を建てた際の借金もまだ残っており、鮨屋も繁盛しているため、10年経過後も甲土地を借り続けたいと考えている。Xは、賃貸借期間満了時にYから「アパートを建てるから甲土地を明け渡してくれ。」と言われた。

 
Q1:10年経過時にXは乙建物を壊して甲土地をYに明渡さなければならないか?
 
Q2:30年経過時にXは乙建物を壊して甲土地をYに明渡さなければならないか?
 

1 期間制限

 民§604 …20年以下
 借§3,4 …借地権(建物所有目的)は30年以上
        更新1回目…20年以上 2回目…10年以上

2 更新拒絶・期間の定め無き場合の解約の制限

 本来、民法上は更新拒絶、解約は賃貸人の自由!
 
 更新…賃貸人の同意が必要
      但し、期間満了時に異議を述べなければ更新(民§619)
 
 解約…何時でも可(民§617)
      但し、終了まで一定期間を要する
      土地…1年 建物…3月
 
But それでは賃借人に酷なことも多い。
 
☆更新拒絶・解約の時期の制限
借家…6ケ月前(借§27)
農地…1年前~6ケ月前(農§17)
 
☆更新拒絶・解約には正当事由が必要!(借§6.§28.農§18)
賃貸人賃借人双方の事情を考慮して判断。賃貸人には厳しい。
 
(借地権の存続期間)
第三条 借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
 
(借地権の更新後の期間) 
第四条 当事者が借地契約を更新する場合においては、その期間は、更新の日から十年(借地権の設定後の最初の更新にあっては、二十年)とする。ただし、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。 
 
(借地契約の更新請求等) 
第五条 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。 
 
(借地契約の更新拒絶の要件) 
第六条 前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。
 
◎ 建物所有目的で土地を貸したり、建物を貸したりすると、賃料の支払いを受けている限り、明け渡しを受けることは、法的には極めて困難!
 
→賃料を貰っている限り、ずっと貸してもよいという覚悟で貸すこと!
 
→期限がきたら必ず返してもらいたい場合は、新設された定期借地や定期借家等を利用すること!
 
3 期限がきたら必ず返してもらえる借地・借家
 
a 定期借地権(借§22)(平成4年8月1日~)
  期間50年以上
  書面で契約の必要
 
(定期借地権) 
第二十二条 存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。
 
b 事業用定期借地権等(借§23)(平成4年8月1日~平成20年1月改正)
  期間10年以上50年未満・事業用建物目的(居住用を除く)
  公正証書で契約の必要
 
(事業用定期借地権等) 
第二十三条 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を三十年以上五十年未満として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。 
 
2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を十年以上三十年未満として借地権を設定する場合においては、第三条から第八条まで、第十三条及び第十八条の規定は、適用しない。
 
3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。
 
c 定期建物賃貸借(定期借家)(借§38)(平成12年3月1日~)
期限の制限無し・賃料の特約も有効
契約前に書面を交付して更新がないことを説明する必要
書面で契約・6ヶ月前までに終了の通知が必要
 
(定期建物賃貸借) 
第三十八条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。 
 
2 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。 
 
3 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。 
 
4 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。 
 
 
d 取壊し予定建物の借家(借§39)(平成4年8月1日~)
  法令・契約により一定期間経過後に建物取壊しが明らか
  建物取壊し事由を記載した書面による契約の必要
 
(取壊し予定の建物の賃貸借) 
第三十九条 法令又は契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合において、建物の賃貸借をするときは、第三十条の規定にかかわらず、建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定めることができる。 
 
2 前項の特約は、同項の建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければならない。
 
Q:転勤で単身赴任のためにアパートを借りようとしたところ、賃料は普通借家なら月5万円だが定期借家なら月4万円と言われた。どちらで契約するか?
 
*定期借家はどんな建物にも適用されるので、今後建物の賃貸借を行う際は、普通借家と定期借家の利害得失を十分理解して選択する必要!
 
 
4 賃借権の対抗要件
本来、賃借権は債権であり第三者には対抗できない。
しかし、賃借人保護のため、不動産の賃借権については、賃借権を登記すれば第三者にも対抗できることとした(民§605)。
but 賃貸人が登記に応じないことが多いので、賃借人が単独で対抗要件を備えられるようにした。
借地…賃借人所有の建物の登記(借§10)
借家…賃借建物の引渡し(借§31)
 
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